美味しかったものはたくさんあって、全ては書ききれないので、その中でも特に記憶に残っているものを。
去年:
すし ふくづか@神楽坂
去年から高級鮨を嗜むようになり、それなりに美味しい鮨は食べて美味しい上限が見えてきた。これからも美味しい鮨には出会えるだろうけど、次元が違うような鮨には流石に出会わないだろう。
そんなことを考えていた2023年年初。初っ端から次元を越えるような美味しさの鮨屋に出会ってびっくり。正直慢心していた。ごめんなさい。
去年紹介した在のことを「鮨と酒のペアリングで200点を叩き出してくる店」と評したが、ふくづかは鮨だけで150点という感じの店。とにかく鮨が美味かった。
その美味しさの秘訣を聞くと「ただ握っているだけです」と答える大将。粋な答えなような、若干塩対応なような。でもとにかく美味しい。
どうやら温度管理が徹底されているらしく、「シャリの温度」「ネタの温度」「シャリの固さ」の組み合わせがネタごとに全部違うとか。その拘りに納得させられるくらい、とにかく美味しかった。
お店の雰囲気も非常に良く、芸能人がお忍びデートでもしてそう。いわゆる神楽坂の高級店といった佇まい。とてもおすすめ。
Le Pre Catran@Paris
パリ16区の森林公園「ブローニュの森」の中にある3ツ星フレンチにいってきた。
多分10年後も覚えてるだろうな、と思えるような良い時間を過ごせた。
詳しくはこちらで。
Chez Inno@京橋
シェフの井上さんが書いた自伝が良かったので来訪。
こっちの記事にも書いたが、今年は料理人からプロフェショナリティを学ぶことが多い年だった。井上さんの本もまさにフレンチの世界で一流となるためにどんなことをしてきたかという本であり、プロ意識を学ぶとともに、フレンチの世界の歴史に少し触れられて勉強になった。
井上さんは残念ながら数年前に亡くなられているが、シェイノは井上さんの哲学を守り、クラシカルなフレンチの最先端を開拓し続けている。
個人的な食の好みはモダンでイノベーティブなスタイルが好きだ。それは例えば寿司にワインを合わせるだとか、日本の食材を使ったフレンチとかそういった方向性。何ならそれは食だけではなく、音楽や写真やファッションでも同じことが言える。
日本の老舗グランメゾンであるシェイノの感想としては「本物のクラシックって、いいよね」という感じ。自分の趣味嗜好としてはやっぱりモダンが好きだけど、クラシックにはクラシックの良さがある。
同じことを音楽でも最近は感じていて、クラシック音楽ブームが自分の中に来ている。去年に引き続き、自分の中で食の解像度が高まった結果、クラシック/モダンという分類が頭の中にできたり、それが音楽や他のジャンルの印象にもリンクしたり、頭の中で色んなものが繋がってきていて楽しい。シェイノはバッハっぽいね、飯でも音楽でも好きなのはラフマニノフかも、そんな感じ。
割烹 室井@西麻布
お世話になってる自由が丘の141のオーナーシェフに誘われ、ご友人が働いているという割烹室井へ。
銀座の和食で有名な室井の二代目が今年独立オープンしたお店だそう。
正直、和食にはあまり興味がなかった。和食は上品で美味しいけど地味でもあり、パンチが弱いと感じてしまうからだ。
そんな事前の先入観を見事に崩してくれたのが室井さん。序盤の大きな伊勢海老から始まり、松茸ご飯に牛肉と卵をかけたり、まあとにかく西麻布らしく(?)派手でパンチのある具材と味。しかしあくまで割烹でもあり、上品さ繊細さとも両立している。
現代の最先端の西麻布の割烹、という印象。非常に良かった。
海老亭別館@富山
割烹室井の翌々日に富山へ。タケマシュランさんの記事を読んで気になっていた海老亭別館へ向かう。
前述の通り、割烹室井は派手だけど繊細な和食で好みだった。それに比べて海老亭別館は派手さはなく、ともすれば地味になりそうな方向性なのだが、全く地味という印象ではない。まだ言語化できていないのだが、派手さはないけど繊細さと上品さに心震える和食。
空間も本当に美しく、5人がけのカウンターテーブルの目の前で調理をしてくれて、その奥には川沿いの木々が見える。この眺望のために、わざわざ部屋を2階にしているそう。春になれば窓いっぱいに桜が見えるらしい。